沿革

北海道畜産学会

北海道畜産学会の前身である日本畜産学会北海道支部は1951年に三田村健太郎氏を支部長として発足した。発足当時の正会員数は151名で、講演会(研究発表を主とする大会)は春と秋の年2回開催されていた。北海道支部会報は1958年から刊行され、翌年には、講演会は支部大会と改称され年1回の開催となった。その頃の北海道支部大会のプログラムを見ると、育種、繁殖、飼養、草地、管理、機械および畜産物利用(乳、肉、皮革)など畜産各分野から50題を越える発表があり、当時の日本畜産学会北海道支部のアクティビティの高かった。

その後、40年間、日本畜産学会北海道支部は北海道のみならず日本の畜産研究をリードする役割を担ってきた。会員数は1967年には300名を越え、1981年には400名を越えたが、1983年の441名をピークにその後減少していった。そのような状況の中で、日本畜産学会北海道支部のあり方をその構成メンバーや事業内容にふさわしい組織に改定し、北海道の実状にみあった活動を強化するために、1992年に、新しい組織である北海道畜産学会が朝日田康司氏を初代会長として発足した。同年、11月には札幌市定山渓において創立大会(通算48回大会)が開催され、「北海道畜産の未来を考える」をテーマに特別講演が行われた。

北海道支部会報もその名称を改め北海道畜産学会報として、総説、研究報告(短報)、技術レポート、解説、会員からの声などを掲載し、2000年(第42巻)からは査読制度を整備して原著論文を掲載するようになった。

北海道家畜管理研究会

北海道家畜管理研究会は1965年に、広瀬可恒会長を選び、ジム太田氏による「家畜家禽の近代的管理施設」と題した特別講演を得て、発足した。その後、45年間にわたり、家畜飼養管理における施設機械・情報処理などの機器に関する情報提供・検討や、畜舎汚水、地域における風土や気象条件、他の農業形態との複合化などの経営問題など、畜産における幅の広い課題に対し、現地検討会とそれに関連したシンポジウム、シンポジウムでの討論も含めた会報の発行を主な行事として、取り組んできた。

北海道草地研究会

北海道草地研究会は、「草地に関する学術の進歩を図り、あわせて北海道における農業の発展に資すること」(会則第2条)を目的とし、昭和42年(1967)3月17日に発足した。初代会長は大原久友氏(帯畜大)、副会長は廣瀬可恒(北大)、星野達三(北農試)両氏であり、発足時の一般会員486名、賛助会員29団体であった。

昭和42年(1967)11月10日に北農試において第1回研究会大会(発表演題22題)が開催され、以来年1回開催されている。現地研究会も昭和44年度から始まっている。昭和49年(1974)以降に一時期開催されなかったが、平成元年(1989)年に復活し、現在にいたっている(毎年恒例ではないが)。現地研究会が開催されなくなった時を同じくし、昭和50年(1975)からは研究発表会において、時の話題をテーマにシンポジウムを合わせて開催するようになった。また、昭和55年(1980)からは、北海道の草地並びに飼料作物に関する試験研究および普及に顕著な行政あげた研究者・指導機関に対し、「北海道草地研究会賞」を贈り表彰することになった。現在(平成22年(2010)12月8日)まで51個人・団体が受賞している。

昭和42(1967)年の発足から9年目の昭和50年(1975)は研究会にとって一つの転機であった。会発足以来事務局は北農試草地開発部に置かれてきたが、帯畜大、北大および北農試での持ち回り担当となり帯広に移転した年である。当時の事務局幹事であった村上 馨氏は、以下の4項目について「提言」している(会報第9号,巻頭言「北海道草地研究会への提言」):(1)シンポジウムを取り入れる、(2)大学の研究と農試の研究(意味するところは、農試の研究成果を検討する場とすること)、(3)草地技術についての行政への提言、(4)日本草地学会との関連(全国的な立場から積極的に発言する)。各項目の詳細は省略するが、要約すると、「研究者や普及員等に対しては従来通りの発表会を通じて知識と問題点の提供を行い、また行政と事業にたずさわるものには、主としてシンポジウムや小集会を通じて問題解決の方向を与えるという二面性を持つのが良いように思われる」である(村上氏)。この二面性を持ちながらの活動は現在に至るまで継続されている。

2回目の転機は、平成5年(1993)6月18日に「北海道草地研究会報編集委員会規定」が施行された時であろう。それまで、講演要旨集の意味合いが強かった会報が、第28号(1994)から編集委員会による審査・校閲をへた「研究報文」を掲載するようになった。以降、年間4~5編の投稿があったが、ここ数年掲載論文0編が続き、学術雑誌として問題が大きい。また、会員数の減少は大きく、ここ10年で正会員113名、賛助会員12社が退会し、現在正会員271名、賛助会員16社である。

北海道畜産学会・北海道家畜管理研究会・北海道草地研究会での共同活動

2006年度および2007年度には、3学会・研究会合同での「北海道畜産の将来を考える会」が組織され、2年にわたる合同シンポジウムの開催などが行われた。北海道家畜管理研究会では、この合同シンポジウムを、研究会が例年実施しているシンポジウムとして、会誌には、シンポジウム報告および討論記録を掲載した。2010年度において北海道家畜管理研究会と北海道草地研究会は、合同シンポジウムを開催した。

学会・研究会を統合した新学会(北海道畜産草地学会)の設立

3学会・研究会は、いずれも北海道農業の発展を目的として、設立され、継続してきた。各学会・研究会の活動内容は異なるものの、対象とする現場は、重なることが多かった。2006・2007年には、3学会・研究会におけるシンポジウムの開催と北海道畜産の将来方向について研究者の立場から共同して検討することを目的に「北海道畜産の将来を考える会」を設置し、合同シンポジウムを開催した。北海道畜産の将来を考える会は、その活動報告書(2008年12月5日)において、「3学会・研究会は共同して尽力すべきである」と指摘した。

これを踏まえ2010年9月に3学会・研究会の統合委員会3学会・研究会の統合に関わる検討委員会が設立され、統合の必然と課題が検討されたうえで、統合の提案が各会なされた。その後、2011年には各会においてこの提案について審議された結果、いずれの会についても統合について進めていく旨が承認され、3会の統合委員会が設置された。統合に向けた具体的策について検討が進められ、その内容を提案書としてまとめ3会の全会員に意見徴集を繰り返し、2012年5月28日設立総会をへて北海道畜産草地学会が設立された。その後3会は2012年12月15日の総会において解散し、実質上3会は北海道畜産草地学会に統合される形となり現在に至っている。